『笑顔のたえない職場です。』感想・書評

漫画『笑顔のたえない職場です。』の感想・書評。漫画家、アシスタント、編集者たちが支え合いながら働く、にぎやかであたたかい職場コメディの魅力を紹介します。

公開日: 2026-06-08

『笑顔のたえない職場です。』の表紙

漫画

笑顔のたえない職場です。

くずしろ / 講談社

『笑顔のたえない職場です。』は、漫画家の双見を中心に、アシスタント、編集者、監修者たちの日常を描いた職場コメディだ。

漫画家の仕事というと、どうしても締切、修羅場、打ち切りといった苦しさのイメージが先に立つ。実際、この作品にもそういう大変さはちゃんと出てくる。単行本発売前にやる気がエンプティになる「単行本発売前ウツ」もあるし、ぎっくり腰もあるし、仕事が楽なものとして描かれているわけではない。

それでも読んでいて重たくならないのは、登場人物たちが互いに思いやり、支え合いながら、仕事と向き合っているからだと思う。漫画家、アシスタント、編集者、監修者。それぞれ立場は違うけれど、みんなが一つの作品に向かって力を出し合っている。その過程には、文化祭の前夜のような高揚感がある。

この作品で特に好きなのは、人間関係に刺々しさが少ないところだ。職場ものは、対立や嫉妬や嫌な人間関係で話を動かすことも多い。でも『笑顔のたえない職場です。』は、そういうストレスで読ませる作品ではない。もちろん仕事の厳しさはある。けれど、人間同士の関係は基本的にあたたかい。だから安心して読める。

個人的に推したいのは、双見のアシスタントであるはーさん(妹)だ。双見とまだ面識がなかった頃、姉を通じてイラストを描いてもらったことが馴れ初めとして描かれている。現在は、双見のことを天才だと思っていて、アシスタントとしてだけでなく、公私にわたって双見を支えている。多くの場面から、はーさんの双見への信頼の大きさが伝わってくるのがいい。ちなみに、はーさん(姉)は双見の親友である。この関係性、少しややこしいけれどかなり好きだ。

登場人物の多くが女性キャラということもあってか、恋愛要素がほとんどないのも読みやすい。仕事コメディとして純粋に楽しめる。とはいえ、友情や信頼が許容値を超えて、たまにイチャイチャしていたり、百合っぽく見える場面もある。そこも含めて、この作品の空気を柔らかくしている。

そして、この作品を読んで一番残ったのは、第59話に出てくる「楽じゃなさそうで楽しそう」という言葉だった。

この言葉は、かなりこの作品全体を表していると思う。双見たちの仕事は、決して楽ではない。むしろ大変そうだ。でも、楽しそうでもある。誰かと一緒にものを作ること、自分の役割を果たすこと、しんどい中でも支え合えること。その全部が、仕事のしんどさとは別の場所にある楽しさとして描かれている。

少し前に流行ったが、FIREのように、経済的自由を得て仕事から距離を置く生き方が理想として語られることも多い。もちろん、働かなくて済むならそれはそれで魅力的だ。けれど、自分はもちろん、多くの人は仕事をしないと生きていけない。だったら、仕事はただ耐えるだけのものではなく、少しでも楽しくできたほうがいい。

『笑顔のたえない職場です。』は、仕事をきれいごとだけで肯定する漫画ではない。大変さも、うまくいかなさも、体力的なしんどさも出てくる。それでも、誰かと支え合いながら働くことの楽しさをちゃんと描いている。

疲れているときにも読めるし、仕事に少し前向きになりたいときにも合う。創作が好きな人なら、漫画ができあがっていく過程そのものにもワクワクできると思う。

楽じゃない仕事の中にも、誰かと一緒だから生まれる楽しさがある。

そんな気分にさせてくれる、にぎやかであたたかい職場コメディだった。

『笑顔のたえない職場です。』の表紙

漫画

笑顔のたえない職場です。

くずしろ / 講談社

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